以前某所での会合で隣同士になった方がオーナーの素敵なお店、「Cofee & Beer轍(わだち)」さんに行ってまいりました。
百合ヶ丘駅の駅前ロータリーの目の前には小さな路地裏にあります。昔の路地裏の風情を残したその場所は周囲の開発からぽつんと残されたノスタルジックな風景を今に残しています。そんな異空間とも言える素敵な場所にお店はあり昼間は喫茶店、夜はライブも楽しめる一大社交場となっています。お店には素晴らしいピアノ、真空管アンプを中心に構成された音響設備が置かれているほか定期的に入れ替えていると言うヴィンテージロードバイクが展示されています。矢野口にあるクロスコーヒーが現代ロードバイクの聖地であるように、こちらのお店はヴィンテージロードバイクの聖地として多くのサイクリストが集うお店でもあります。
今回は同店で開催されている開店5周年記念企画の「MINITURE BICYCLE Collection CINELLI SUPERCORSA 1/12 Scale by Masayuki Yamamoto」を見るために訪問いたした次第です。こちらの個展の作品を制作しているのはミニチュア自転車作家の山本雅之さん。3月に開催されたイベントで山本さんの作品に触れる機会を得て、5月に個展を開くことを知りました。そんな経緯で今回の訪問と相成った訳です。
人身事故で小田急線が遅れたものの、思ったより遅延時間が少なく、開店時間から30分ほどしてからの入店。入口でマスターがお出迎えして下さいました。久しぶりにお会いいたしましたが相変わらず渋いナイスガイ。お店に入ってすぐのテーブルに山本さんがいらっしゃいました。展示してある作品を改めて見ると本当に精巧に作られており、その完成度に驚かされます。部品の切り出しや細かい加工はどれだけ神経を尖らせて作っているのか想像するに難しくありません。山本さんは大学生時代に爪楊枝で自転車のミニチュアを作っていたそうですが、その後金型設計製作のプロとして働き、2015年頃から金属加工でのミニチュア制作をするようになったのだとか。繊細な作業をされる方ですし、とても取っ付きづらそうなイメージがありましたがその思い込みは全くの間違いであることをすぐに思い知らされることになりました。とにかく話上手で終始笑いっぱなし。聞くところによると、アンナプルナ峰などの登頂経験のあるアルピニストでもあるのだとか。何ともすごい経験の持ち主でびっくりです。
お店はひっきりなしにお客様がいらっしゃり、食事や飲み物を楽しまれていました。高校生が一人で入店したのには驚きましたが、若い頃から堂々と渋い喫茶店に入店できるのはすごいなと。そうこうしているうちに山本さんを訪ねてきた女性が入店されました。どなたかと思ったら何と、2006年に開催された自転車のトラックマスターズ世界選手権で優勝した和地恵美さんでした。和地さんの優勝の報に触れた当時、自分の年齢でもやる気になれば何かしらやり遂げることが出来るんだろうなとおぼろげに思った記憶があります。そんな和地さんもお話上手な方。詳しく書いていると小説が書けるくらいの長さになりそうなので割愛させていただきますが、貴重なお話を伺うことが出来ました。
昼食、デザート、飲み物、どれもとても美味しいものでついつい長居をしてしまいました。後ろ髪を引かれる思いでお店を後に。帰る頃には小田急線は何事もなかったのように通常運転に戻っていました。
食事や飲み物の美味しさは言うまでもなく、オーナー、マダムのお人柄、お店の雰囲気全てが素敵でした。近所にあったら間違いなく通い詰めるであろうお店ですね。
またお邪魔します。